1|「心身の疲れ」「不安、悩み」
厚生労働省『労働者健康状況調査』(1997年)によると、「普段の仕事で身体が疲れる」は約72%、「普段の仕事で神経が疲れる」は約75%、「強い不安、悩み、ストレスがある」は約63%と報告されています。
しかし、キャリア・コンサルティングを求める相談者の場合、もっと多くの「心身の疲れ」「不安、悩み」を抱え、心理状態はきわめて不安定であると思われます。
その要因として、相談者がこのような状況におかれたことに対し、憤り、不満、落胆などを感じ、また進路に対して不安、緊張、焦燥、絶望などを感じていることがあげられます。
2|全人的にクライエントにかかわる
しかし、それだけではありません。相談者の問題構造を理解するためには、ライフステージの発達課題や危機、その世代特有の健康障害を考えないといけないからです。
キャリア・コンサルタントは、相談者のこうした状況を、コンサルティングの全実施過程、とくに初期においてしっかり把握し、的確な見立てに基づき、適切なケアや指導を行う必要があります。また、心の問題や症状が深刻な場合は専門家へのリファーを行う必要があります。
メンタルヘルス・ケアは決してキャリア・コンサルティングの役割の範囲外ではありません。メンタルヘルスを含め、トータルに全人的に相談者へかかわる姿勢がキャリア・コンサルタントに求められます。
○ エリクソンの自我の発達理論
「人生の8段階における自我の発達課題」
エリクソンは独自の精神分析学的発達論を展開しました。発達の諸段階における社会との関係を問題としています。このような「心理・社会的」検討から、エリクソンは発達段階を下表のように8つに分け、これを人生周期と呼び、各発達段階には各々発達させる発達課題があるとしました。
そして、人はこの課題を人間関係を通して克服しながら自らの性格を発達させていくとしています。またエリクソンは、一生を発達と考え各段階の課題とそれを獲得する過程で起こる危機について展望しています。