【3】キャリア発達とメンタルヘルス

キャリア発達・青年期の発達課題(10代後半~20代後半)

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キャリアコンサルタント_キャリア発達・青年期の発達課題

青年期は、自立、自己実現の第一歩が始まる時期で、課題が多くあります。

ここでは、自我の分化、自己概念、孤独、進路指導、職業との適合、不適応と健康障害など、この時期に多く見られる問題にふれていきます。

1|自我の分化

子どもには『自分』は存在するが、自分を観察する『もうひとりの自分』は存在しない。思春期以降の青年期においては、自分が『見る自分』と『見られる自分』に分化することにより、自分の内面の世界が広がり、自分を第三者的、批判的に眺められるようになります。

その見方は大人から見れば未熟ではありますが、自我の分化から青年の自立あるいは自己実現の第一歩が始まるときなのです。

2|自己概念

自我の分化は「自分はどんな人間か」という自己概念の明確化をもたらします。 しかし、青年期では、自分の容貌、才能、成績、性格、学歴、人づき合い、家族などを理想像と比較するため、自己評価が低下し、劣等感が生まれ、自我が矮小化します。自己概念は否定的な方向に向かうだけでなく、ちょっとした出来事でも優越感が生じたり、常に不安定な状態です。

このように理想像と自己像のギャップは、青年を神経症的状態の中におくよう になりますが、キャリア発達の視点から見ると、青年が未来を展望し自己を修正し、自分のパーソナリティを再び築いていくためのバネともなるのです。

3|孤独

青年は自分という存在、他人とは異なる個別性を強く意識することにより、強い孤独感をもつようになります。その背景として、「精神的交流の欠如」「生活感情の相違」「自己劣等感」「周囲への反発」「連命的諦観」などがあげられますが、なかでも「自己劣等感」が男女問わずもっとも大きく作用しています。

このような青年期の孤独に対して影響を与えるものが、集団とのかかわりです。

プラスの影響として、集団への所属は「孤独感の開放」とともに「社会的自我の形成」「自立の促進」など効果的に機能します。

一方、マイナスの影響として、集団に逃避・埋没し、自立が妨げられたり、 劣等感のため集団に適応できず、孤独が強化されたりします。

4|進路葛藤

青年は多種多様な職業種類の中から自分の適職となるものを見つけていかなければいけません。たとえ、この時期に選択を誤ってもやり直しは可能ですが、できればはじめからもっとも適した仕事につきたいという願望もありなかなか容易に決められません。したがって、進路決定についての葛藤は不可避です。

青年期は、「会社員として」「スポーツ選手として」その他いろいろなかたち としての自分を社会に向かって自己定義し、その定義にふさわしい生き方を身 につけて、社会における一定の位置づけを獲得しなければならない段階です。すなわち、職業としての『自我同一性の確立』が求められます。

しかし、青年には「自分は何がしたいのか」「何ができるのか」がまだ定かではない場合が多く。そのなかで、自分のいろいろな可能性を断念して、何か一つの方向 に目分を制限してしまうことには耐えられない感情もあります。

そこで自己決定を回避し、社会人への準備期間を延長しようとする青年も少なくありません。いわゆる「モラトリ アム(猶予)」です。

5|職業への疑問

就職とは、自己概念を職業の中に具体化することです。
自己概念を実現できる職業は何か、現実の吟味を経て、選択肢が特定化され、その選択が実現していくのです。就職後も、はたしてそれが生涯にわたる自分の職業かどうかの吟味が繰り返されますが、多くの場合、それはつらい作業でもあります。

① まず、自分と職業とのぴったりとした適合感を実感することは至難で、選択した職業との不一致が起こりやすいです。

② 学生から勤労者へ役割が移り、趣味、遊びといった享楽の比重が激減します。

③ 集団のメンバーに仲間として認めてもらうこと、仕事ができるようになったと認めてもらうこと、この二つの通過儀礼をパスしないと職場になじむことができません。

このような状況の中で、青年の多くはリアリティショックを受け、幻滅の悲哀を味わうことがあります。

6|不適応と健康障害

上述のように青年期では、「生涯の仕事の選択と社会的役割との一致」を達成し、社会の中で自分にふさわしい場所を見いだそうと試行錯誤がつづけられます。しかし、それがうまくいかないと、青年はいつまでも親(とくに同性)と和解できず、親から自立・独立できない状況になります。

そのうえ、新たな環境のなかで生じる「適応不安」が加わり、危機的状況がつくられることが少なくありません。

こうした青年期の精神医学的問題として、「社会恐怖症」「対人恐怖症」「強迫神経症」「自己臭症」「家庭内暴力」「ひきこもり」「青年期境界例」「無気力症候群(アパシー)」「薬物依存」「うつ病」「統合失調症(精神分裂病)」などの精神障害や、「過敏性腸症候群」「パニック障害」「過呼吸症候群」「ヒステリー性失立・失歩」「心因性嘔吐」「摂食障害」「十二指腸潰場」などの症状が指摘されます。

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